文学部創設125年記念展示
12月2日~18日(展示日数15日間)


「モノがたる文学部 資料にみる人文学研究」
会場:慶應義塾大学三田キャンパス慶應義塾図書館(新館)展示室
ことばや思考といった形のないものの探求をその使命とする文学部ですが、実際の研究は、資料や書籍、機材など、多様な「モノ」にささえられています。こうした「モノ」との絡み合いのなかで進められる人文学研究とは一方で、それらの「モノ」にさまざまな価値を見出す、あるいは付与していくプロセスでもあります。国宝や重要文化財に指定された資料をはじめ、貴重書や機材など、文学部の活動に関わってきたさまざまな「モノ」をとおして、「モノ」の価値を生み出す文学部の研究を紹介します。
展示では多様な分野からなる文学部の全体像を可能な限り示すため、各専攻の研究にゆかりの深い物品を展示、これに各専攻の立場から解題を付します。それとともに、義塾が多数の貴重・希少な物品を所有していることが、残念ながら学生をはじめ内外にはあまり知られていない現状を踏まえて、そうした貴重資史料への興味関心を、ぜひ来場者の皆さまのなかに喚起したいと考えています。
「師弟のことば 西脇順三郎と井筒俊彦」
会場:慶應義塾大学三田キャンパス南別館アートスペース
最初期より言語それ自体の研究を重視した文学部では、戦前から「言語学概論」の授業を設置し、多くの専攻がこれを必修科目としていました。この科目を長らく担当していたのが、ノーベル文学賞候補にも挙がった学匠詩人・西脇順三郎と、その弟子にして東洋哲学の大家でもあった井筒俊彦です。当展示では、二人の手稿や蔵書を通じて、ことばと向き合った師弟の姿を描きます。
これまで幾度も評価されてきた詩人・画家としての西脇ではなく、学者・研究者としてヨーロッパの中世・近代文明と向き合った西脇に光を当てます。彼は言語、とくに異言語に接した際に身内に湧き上がるイメージを重視した詩人でしたが、学問的にも言語が織りなす意味の世界を最重要と見なしました。評価されることにあまりない、晩年の漢語・ギリシア語の比較研究もその一環と捉えられるでしょう。
その西脇に教えを受けた井筒は、終生西脇を真の師と仰ぎ尊敬していました。「言語学」といった科目のみならず、言語を起点とした意識・文明の東西対照などのテーマ、古今東西の文学・思想・哲学の援用など、西脇の方法論をも自身の研究に引き継いでいるように見受けられます。二人の師弟が共有していた興味を、「詩・ことば・東西の文明」などのキーワードでたどります。
【展示内容のご紹介】
哲学 | ルネ・デカルト『方法叙説』初版 | 貴重書室 |
倫理学 | クレメンス・ティンプラー『形而上学の方法論的体系』 | 個人蔵 |
美学美術史学 | フランツ・リスト『ブロンドの小さな天使』自筆楽譜 | 貴重書室 |
日本史学 | 重要文化財『相良家文書』 | 貴重書室 |
東洋史学 | イスバハーニー『詩を詠じた女奴隷たちについての渇きの癒しの書』 | 貴重書室 |
西洋史学 | ペトルス・ロンバルドゥス『命題集』写本零葉 | 貴重書室 |
民族学考古学 | 国宝「秋草文壺」 | 東京国立博物館に寄託 |
重要文化財「日吉・矢上古墳出土品」 | 民族学考古学専攻 | |
国文学 | 紫式部『源氏物語・葵巻』奈良絵本 | 貴重書室 |
中国文学 | 蒲松齢『聊斎草』 | 貴重書室 |
英米文学 | 「ホプトン・ホール写本」 | 貴重書室 |
独文学 | アタナシウス・キルヒャー『ノアの方舟』初版 | 貴重書室 |
仏文学 | シャルル・ボードレール『悪の華』初版 | 貴重書室 |
図書館・情報学 | グーテンベルク42行聖書(慶應本) | 貴重書室 |
社会学 | ハーバート・スペンサー『社会学の研究』福澤諭吉書込入 | 福澤センター |
心理学 | スキナーボックス | 心理学専攻 |
教育学 | フリーデン社製全自動電気計算機 | 教育学専攻 |
人間科学 | DEC製ミニ・コンピューター | 人間科学専攻 |
諸国語 | ダンテ・アリギエーリ『神曲』1487年刊本 | 貴重書室 |
オペラント箱(スキナー箱)
奈良絵本『源氏物語』(葵)
重要文化財 相良家文書