文学部開設125年にあたり

文学部長 関根 謙

慶應義塾は福澤諭吉先生が1858年に開設した蘭学塾を創立の源としております。文学部は1890年(明治23年)1月に理財科・法律科とともに設置された文学科が前身で、2015年に創設125年を迎えることとなりました。顧みますれば、この125年間、日本は様々な困難を乗り越えて近代的な平和国家を創り上げてまいりました。戦争や飢餓を克服し、アジアの一員として、世界の一員として友情と共存の安定的な構築はまさに慶應義塾創立以来の宿願であり、その実現のために文学部の多くの先輩の方々も懸命な努力を積み重ねてこられました。残念ながらその途上には、戦火の中で犠牲となられた方々も少なくありません。

しかし文学部は創設以来、権力におもねることなく、多様な価値に広くまなざしを向け、学問の自由を堅持すると同時に、自らに課せられた天命ともいうべき真理の追求に、真摯に邁進してまいりました。私たちはこうした歴史と伝統の重みをしっかり受け止め、創設150年に向かって皆様とともに進んでいきたいと考えます。

記念すべき125年を迎えるにあたって、文学部ではこれからの教育研究活動の展開の資金として、募金活動を開始することにしました。皆様ご承知のように、文学部は創設以来、寄付をお願いする活動はきわめて不慣れでした。しかし創設時を振り返ると、福澤諭吉先生は大学部設立のために非常に活発な募金活動を行いました。自由な私学としての学風を守るにはこうした活動も必須であり、重要な伝統であると考えます。文学部が多くの学生や研究者とともに、今後さらに充実した教育と研究の成果を上げるためには、やはり独自の資金が必要です。皆様におかれましては、125年記念募金の趣旨をご理解いただき、文学部にぜひ熱いご支援をお寄せください。今後とも慶應義塾大学文学部へのご指導ご鞭撻をどうぞよろしくお願いいたします。